先日、うちのかかりつけ動物病院の院長先生が、
検査機関の方とお話しをする機会があって、
FIPについて、すとんと腑に落ちたということを
お話ししてくださって、最新の雑誌論文も見せてくださって、
私としても、興味深いデータなどたくさんあって
いつかそのこともブログに書こうと思いつつ、
ここのところ、脳内に2重らせんがぐるぐる回っていたのですが、
今まで、遺伝子検査について大きな勘違いをしていたであろうことに
今さっき、気付きました。
生物の体にある細胞1個1個には、
その個体のDNAが全部記録されていて
だから、犯行現場に落ちている髪の毛1本からも
犯人を特定したりすることができるし、
がんになる遺伝子があるかどうかもわかったりする、というのが
私の理解の出発です。
なので、猫の病気に関する遺伝子検査も、
その個体の細胞に記録されたDNAを解析して、
親子判定ができたり、病気かどうかを検査できたりするのだと思っていました。
親子鑑定の遺伝子検査を民間会社に依頼したとき(2007年頃)、
遺伝性の心疾患の検査もしてもらえないのか、と聞きました。
遺伝子検査で遺伝性の心臓疾患があるかどうかを調べることはできるが、
その判定に使うプライマーというものに、著作権のようなものがあり、
その会社には、猫の心疾患のプライマーがないのでできない、というような返事でした。
(プライマーさえあれば、その会社でも検査ができるということ)
その時、「プライマー」というものについて、
定規というかお菓子の成型型のようなもので
そこにDNAをあてはめて、あう・あわないを判定するようなイメージを持ちました。
数年後、FIPの遺伝子検査が、研究機関だけじゃなくて、
一般の動物病院が普通に使う検査機関で行えるようになり、
下痢の原因のウィルスや原虫を特定する下痢パネルという遺伝子検査や
眼や鼻の粘膜にいるウィルスや細菌を特定する
呼吸器パネルという遺伝子検査ができるようになりました。
これらについても、猫の細胞側のDNAの解析をして、
そこに、各種ウィルス等がいるかどうかを調べるのだと思っていました。
だから、元気な状態の子猫の遺伝子検査をして
その子がFIPを発症することを事前に検査できないものなのかなあ?などと
思ったこともあります。
遺伝子検査で、クラミジアもヘルペスもいなくなっているのに
鼻炎や結膜炎が治らないのはなぜだろう、とも思いました。
「ヘルペスは症状がなくなっても、神経細胞に潜んでるからねえ」という
院長先生の言葉も、よく意味がわかっていなかったんだと思います。
さっき気付いた勘違い、というのは、
下痢パネル、呼吸器パネル、FIP検査というのは、
便、呼吸器の粘膜、血液の中にいる、
細胞やウィルスのほうのDNAを解析しているのであって、
宿主の猫の細胞の遺伝子検査をしているのではない、ということ。
親子検査、遺伝性心疾患の遺伝子検査などは、
猫の細胞を解析し、そのDNAとプライマーを照合してプラスマイナスを判定するけれど、
呼吸器パネルなどは、粘膜の中にいる細菌やウィルスなどのたくさんのDNAを
クラミジアやヘルペスのプライマーと照合して、
それらがプラスかマイナスかを判定しているのだろう、ということです。
そして、普及している検査のウィルスや原虫のプライマーは、
それらのDNA全部ではなく一部であって、
例えば、コロナウィルスには、いくつか株があるけれど、
それらに共通する一部分のみがプライマーとなっているので、
コロナが陽性だったとしても、どんな株かということまではわからないし、
もしかしたら、コロナウィルスではないかもしれない。
(プライマーが一部分だから、そこが共通の他のウィルスかもしれない)
この勘違いに気付いた時、
今までもやもやと疑問に思っていたことが
すっきりしました。
(院長先生がFIPについて腑に落ちたということより、
ずっとずっと低いレベルで、腑に落ちました……。
でも、先生のお話しと論文から、今までの自分の勘違いがわかってよかった)
下痢、鼻炎、結膜炎、FIPなどの遺伝子検査の結果で
プラスマイナスが症状と結びつかない場合があること、
ようやく、その意味がわかりました。
といっても、今の私の理解があたっているかどうかもわからず、
それを、どう確認したらいいかがわかりません。
遺伝学の基本的なことがわかりやすくまとまっている本を探してみよう。
遺伝、おもしろいです。