万引き家族も観たかったのですが、これはDVDでもいいけど
フジ子ヘミングの時間は、音響のよい環境で観たかったので、こちらにしました。
誰かが、フジ子役を演じて、彼女の波乱万丈の人生を描くのではなく、
2年間ほど密着取材をしてまとめた、全編本人出演のドキュメンタリーです。
話としては、彼女のエッセイを読んだほうがおもしろいと思うのですが、
なんだか見入ってしまう映画でした。
20年ほど前、叔母とお昼ご飯を食べながら見ていた「徹子の部屋」に出ていた、
一風変わった苦労人のピアニストが衝撃的に印象的で、心に残っていました。
その10年くらいあと、友達に「チケットとれたんだけど、行く?」と誘われて
フジ子さんのコンサートに行き、ふたりともクラシック愛好家ではないにも関わらず、
鳥肌たつほど感動したのを覚えています。
なんていったらいいのかしら、華やかな音色で、
フジ子さんが鍵盤をたたくと、そこから金粉が舞い上がって
客席に降ってくるような感じ?
今日見た映画で、フジ子さんが「音には色があるから」とおっしゃっていましたが
生演奏を聴いた時の感動は、まさにそれだったのだと思います。
その後、CD「奇跡のカンパネラ」は、レコードだったら擦り切れるほど聴きました。
最近、私はフジ子さんの演奏しか知らないからいいと思っているだけで、
実は、他の人の演奏でもたいして変わらないのでは?と思い、
YouTubeや、iTuneで、他の人が演奏するラ・カンパネラをいろいろ聞いてみたのですが、
全然違うのですね。
(こういう聞き比べがすぐできる、って便利な時代ですね)
彼女、80歳は優に超えていて、90歳近いのではないかと思うので、
できればもう一度生演奏を聴きたいです。
(CDで、ドビュッシーの月光を聴いたことあるけど、
ベートーヴェンの月光は聴いたことがないので、是非聴いてみたidesu.
それにしても。
ターシャ・テューダーさんがバーモントでひとりで
広大な庭づくりを始めたのが56歳。
フジ子さんが、貧乏・苦労の果てに花開いたのが60歳過ぎ。
ふたりとも、ひとりで、自分の好きなことに没頭することで
自分も周りも幸せにしていて、
老いることへの恐怖より、老いても夢を見ることの大切さを教えてくれる
貴い人生の師だな、と思います。
最近、樹木希林さんのインタビュー記事で、
彼女が小学生の頃、水泳大会があって、彼女は水泳が得意ではなかったので、
平泳ぎやクロールではなく、水中ウォーキングの部に参加したところ一番になり、
賞品が、平泳ぎやクロールの一番と同じで、
ちゃんと泳いで一番になった子からずるいと言われたことがあり、
その時に、自分と他人を比較することの無意味さに気付き、
女優になってからも、他人と自分を比較することは一切なかった、というようなことを
おっしゃっていたのですが、このことも、
ターシャさんやフジ子さんと共通する気がします。
最近、学生時代の友人と自分を比較して悲しくなったり、
実現できなかった夢を思い返しては、落ち込んだり、
老化する自分の肉体を嘆いたり、ということが続いていたのですが、
そんなことに時間を費やすのは馬鹿げた無駄なことであって、
今、自分にできること、好きなこと、楽しいことを積み重ねるほうが
よっぽど大切なことだ、と思えるようになりました。
お勧めできる映画かどうかはわかりませんが、私は観てよかったです!
※フジ子さんの弟が大月ウルフさんだとは知らなんだ……。
【追記】
聞き間違いかもしれないのだけれど。
「恋に落ちてるの。
(カメラマンに向かって)今度会ってね。
2〜3年でも楽しかったら、それでいいじゅない。」
と言ってた気がするのだけど、私の妄想?