ワクチンの抗体価検査は、あまり一般的なものではないと思います。
私のブログを、他のブリーダーさんや猫カフェさんが
ご覧になっている可能性は低いとは思うのですが、
もし、どなたかが検索してたどりついて、役にたつことがあるかもしれないので、
私の経験を記しておきます。
ワクチンの抗体価は、ウィルスに感染しているかどうか、ではなく、
ワクチンのウィルス予防効果がどれくらいあるかを
検査するものです。
(コロナウィルスの抗体価は、腸内にいるコロナウィルスの抗体が、
血液内にどれくらいあるかを検査するもので、
ウィルスがいることを前提にしていますが、
ワクチンの抗体価は、体内にウィルスがいないことを前提にしています。
どのウィルスでも、体内にいるかどうかを知りたい場合は、
遺伝子検査が確実です)
結論からいうと、もし、ブリーダーさんが猫カフェに子猫を譲ることになった場合、
猫カフェさんが、子猫をデビューさせる場合、
ワクチンを接種し、その1〜2週間後に
ワクチンの抗体価が十分にあがっていることを確認してから、にすると
パルボウィルスによる反汎白血球減少症による死亡を予防できると思うし、
ヘルペスウィルス、カリシウィルスによる猫風邪を発症しても
症状を軽減できると思います。
私が、うちの子猫たちで行ったのは、
マルピーライフテック社の「猫ワクチンセット」という血液検査です。
このように、パルボウィルス、カリシウィルス、
ヘルペスウィルスの抗体価がわかります。
★3か月以下の子は、移行抗体を配慮する必要がある旨、
注意書きがあります。
【基準値】
カリシ4倍以下、ヘルペス2倍以下、パルボ10倍未満:ワクチン効果不十分
カリシ8〜16倍、ヘルペス4〜8倍、パルボ10倍〜20倍:
現時点でワクチン効果が期待できが、
1年以上の効果を期待するにはもう少し高い抗体価が望ましい。
カリシ32倍以上、ヘルペス16倍以上、パルボ40倍以上:
十分なワクチン効果が得られている
ワクチン接種してから抗体ができるまでに1〜2週間かかると言われます。
その期間を経過してから、抗体価を検査し、それから猫カフェデビューさせれば
パルボで死亡することはおそらくないでしょう。
検査は1回8000円程度ですが、安心を買うと思えば安いものです。
以前、我が家で猫風邪による鼻炎・結膜炎が流行した時、
私は、まずワクチンの回数を増やし、6週、9週、12週で接種しました。
また、3種ワクチンだけだったのを、3種、5種、7種の組み合わせにしました。
結膜炎の症状が強くて、クラミジアが一番悪さをしていると思われたので、
クラミジアのはいっているワクチンにしたかったからです。
(ただし、現在は、5種も7種も手に入らなくなってしまい、3種のみに戻りました)
その後、6週、9週で接種しているワクチンに意味があるのか、と
疑問に思うようになり、抗体価の検査をすることを思いつきました。
母親からの移行抗体の減少と、ワクチンの抗体の増加を
きちんと確かめたかったからです。
2016年、複数の猫で、1か月、2か月、3か月と抗体価検査をしていった結果、
我が家の場合、個体差はあるけれど、生後10週〜11週で母親からの抗体価が減少し、
その時期に接種したワクチンから効果が出る、ということがわかりました。
画像は、ヘーゼルナッツという子の検査結果ですが、
この子についての推移は以下の通りです。
2016年4月12日誕生
5月19日(生後6週):パルボ40倍、カリシ16倍、ヘルペス4倍
母猫からの移行抗体で十分守られています。
この日に1回目のワクチンを接種しました。
6月15日(生後9週):パルボ10倍未満、カリシ32倍、ヘルペス2倍未満
母猫からの移行抗体が減っていて、1回目のワクチンの効果は出ていません。
(うちの子猫に生後6週でワクチンを打っても無意味ということです)
生後9週というのは、生後2か月ですが、
この時期にパルボウィルスに感染すると
ほとんど防御できない、ということです。
この日、2回目のワクチンを接種しました。
7月6日(生後12週):パルボ10倍未満、カリシ32倍、ヘルペス2倍未満
2回目のワクチンの効果も出ていないことがわかりました。
この日3回目のワクチンを接種しました。
従来、子猫のワクチンは生後2か月、3か月で接種することが一般的でしたが、
生後2か月で接種したワクチンでは抗体ができない、ということです。
(移行抗体がなくなる時期には個体差がありますが)
今回のパルボ事件で亡くなった子猫たちもワクチンを接種していたようですが、
生後2か月で接種しても、そのワクチンで抗体ができなかった、あるいは、
抗体ができる前にカフェデビューしてしまった、ということになります。
8月3日(生後16週):パルボ20倍、カリシ256倍、ヘルペス8倍
3回目のワクチンで、ようやくパルボの抗体があがってきました。
それでも、まだ十分ではありません。ので、4回目のワクチンを接種しました。
この4回目のワクチンの抗体は検査しませんでしたが、
検査機関とかかりつけ獣医師が相談してくれて、我が家の場合は、
11週と16週の2回ワクチン接種するのがよかろう、ということになりました。
私は、とにかく猫風邪が怖かったので、この3種のウィルスの中では、
ヘルペスの抗体価を一番気にしていたのですが、
検査機関のほうでは、パルボの抗体価を重要視した説明をされていました。
その意味が、今、はっきりとわかりました。
どちらにせよ、この検査を行ってよかったです。
この年、数頭を数回検査し(4回通して検査したのはヘーゼルのみですが)、
計15回の検査を実施したので10万円以上の出費にはなりましたが、
このおかげで、ワクチン3回接種から2回接種に減らすことができ、
もっとも確実な時期に接種することができるようになりましたし、
移行抗体もワクチンの抗体もない危険な時期、ということも
再認識できるようになりました。
子猫たちのかけがえのない命を守るための大切なステップになったうえ、
ビジネス的に見ても、コストダウンにつながる投資だったと思います。
生後2〜3か月の子猫は、文句なくかわいらしく、
猫カフェにおいては、超スーパーアイドルになること間違いなしですが、
上記検査結果を見ると、感染症の危険が最も高い時期です。
生後3か月までは、外部との接触を避けて育て、
生後3か月頃にワクチンを接種し、抗体ができるまで2週間くらい待って、
(できれば抗体価の検査もして)
それからカフェデビューをさせると、感染症のリスクをかなり減らせます。
保護猫であれ純血種であれ、ひとつの大切な命です。
もっともかわいい時期に売り出すことができなかったとしても、
猫はその存在自体いとおしいはずです。
FIPなど、予防のできない病気もありますが、
ワクチンで簡単に予防できる病気は予防したいものです。
(しかも、そのワクチンの効果も測定できるのです!)
今回の事件で、私は自分の猫は大丈夫か、ということで
しばらく頭がいっぱいになっていましたが(今もですが)、
亡くなった猫さんたちが気の毒でなりません。
そして、現在臨時休業中のお店の猫さんたちも心配です。
事態がよい方向に向かうことを心から願っています。
そして、うちの店を大切に思ってくださる皆さんに、
「うちは大丈夫!」と言い続けられるよう、
今日も、せっせと掃除や消毒に励みます。
【補足】
2016年、15頭ほど検査したのは、
同腹兄弟姉妹で抗体価にばらつきがあるか、
母親が違う、月齢の同じ猫でばらつきがあるか、
母猫のワクチンの時期で、移行抗体の量に差があるか、を
知りたかったからです。
月齢が同じ子猫なら、個体差はたしかにあるけれど、
抗体価に大きなばらつきはなく、
ワクチン接種後すぐ交配した母猫の子と
ワクチン接種後一年後くらいに交配した母猫の子の
抗体価にも大きな差はありませんでしたが、
ワクチン直後に交配した母猫の子の抗体の減少のほうが
一週間程度遅いような気がします。
もっとたくさんの子猫で検査すると、
このあたりもはっきりするのでしょうが、
それはお金がかかり過ぎて無理です。
ヘーゼルナッツの抗体価の推移は、
きちんとワクチンを毎年接種している母猫から
産まれた子猫の平均的な数値と、
考えてよかろうと思っています。
今後は、おとな猫たちで、
ワクチン接種後2年、3年、4年…と検査して、
3年に1回でいいのか、もっと減らせるのか、
それとも、毎年接種しないとだめか、を
検査していきたいと思っています。
年取るとワクチン後の不調が強くでる気がして、
年寄り猫は、健康診断や持病の治療はしても、
できるだけワクチンを接種したくないです。
昔、動物看護師の友人から、
「ワクチンしてなくて、犬を亡くした飼い主さんご、
新たに子犬を迎えて、もう同じ過ちをするまい、と
ワクチンうちにきたんだけど、その子犬が
ワクチンの副作用で死んじゃって、
飼い主さん茫然としちゃってね。
ワクチンしないのも怖いけど、
ワクチンも怖いから、悩ましいよね」と
いう話を聞いたことを思い出しました。
ワクチンの副作用で死亡まで至るのは、
何万分の一の確率ですけれども、
怖いことは怖いですよね…
2018年08月07日
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