生後約4か月でお引っ越ししたムースくんですが、
お引っ越し後約2週間で熱っぽいとのことで入院しました。
(私の世田谷のかかりつけ病院)
血液検査では大きな異常は見られなかったものの、
異常がないのに発熱、という点で、
なんとなく、よくない予感はして
FIP疑惑について申し上げていました。
入院中に、採取できないほどのわずかな
腹水がたまっていることがエコーで判明したりもして。
オーナーさんは、桜新町の頃のカフェの常連さんで、
私のブログもずっとご覧くださっていました。
FIPについての記事も全部読んでくださっていました。
なので、私がFIPの可能性を申し上げた時の
理解もとても早くて助かりました。
早い時点で、「もしもFIPだったらどうしようか?」と
相談させてもいただいていたのです。
ステロイドで回復し、いったん退院し、
わずかな腹水もなくなって、喜んだものの、
経過観察中に熱があがり、
食欲がなくなり、
脈が速くなったとご報告をいただき、
お盆の前で動物病院が軒並みお休みに入るタイミングだったこともあり、
横浜でFIPの治療に力をいれているブルーム動物病院に
行っていただきました。
(この間、私とオーナーさん、世田谷の病院との間で
細かくやりとりもあり、滅茶苦茶迅速に方向性が決まりました。
入院の時点で、オーナーさんに私が知っているFIPのことを
すべてご連絡し、治療の選択肢も提示させていただきました)
数年前まで、FIPは99%以上の致死率の病気でした。
しかし、2019年頃中国のブラックマーケットにて
MUTIANという特効薬が入手できるようになりました。
ただし、体重にもよりますが、薬代が100万前後かかるという
非常に高額な薬でした。
その後、それとほぼ同じ成分という注射薬「GS」というものが
同じく中国で発売されました。
薬代だけなら、MUTIANの1/5〜1/10の価格になりました。
那須のかかりつけの先生は、飼い主にこの薬を個人輸入させ、
検査や経過観察をするという形で治療をされましたが、
その劇的な効果に驚かれていました。
その話を伺ったのは今年に入ってからです。
(今年年末年始の段階で、にゃみりーさんからも
GSについての情報をいただいており、
ジルくんにお勧めしようと思っていたところ、
ジルくんは残念ながらなくなってしまいました。
診断が早ければ、GSで治療ができたかもしれません)
もし、今後RIEN出身の猫がFIP発症したら、
那須の先生にその薬の詳細を伺って
個人輸入して治療するつもりでした。
そして、昨年末、人間の新型コロナウィルスの内服薬として、
モルヌプラビルというものが承認されました。
今までMUTIANやGSを使ってFIP治療されていた
獣医師たちが、モルヌプラビルを使うようになりました。
84日間内服する必要がありますが(MUTIANもほぼ同じだったかと)、
副作用少なく、みるみるうちに症状が軽くなるらしい、と
ネットで情報を得ました。
費用もMUTIANの1/10程度らしいと知りました。
そして、横浜のブルーム動物病院が使っているということもわかりました。
上記3つの選択肢なら、モルヌプラビルがベストだろう、と
私もムースくんのオーナーさんも考えました。
(なんたって、ブラックマーケットではなく承認された薬ですし!)
横浜ならなんとか行かれるとのことでしたので、
もし、ムースくんがFIPならば、
ブルームさんで治療をしよう、ということになっていました。
ですので、再度発熱したというご報告を受けてから、
オーナーさんがムースくんをブルーム動物病院へ連れていくまでは
本当にスムーズだったのです。
初めて猫を飼うのに、FIPの理解も早く、
私の言葉に耳を傾けてくださったこと、
本当にありがたいと思っています。
そして、ブルーム動物病院でも、FIPの確定診断には悩まれたようですが、
ヘマトクリットが13%という危機的な貧血状態で、
それがFIP由来だとしたら、一刻も早く治療を開始しないと
すぐに死んでしまうだろう、ということで
ドライタイプFIPと仮診断して
モルヌピラビルでの治療を開始しました。
免疫介在性溶結性貧血の可能性もあったため、
モルヌピラビル&ステロイドで治療をはじめ、
数日後には劇的に回復しました。
ステロイドが効いている可能性もありましたが、
ステロイドをやめたあとも、状態がよかったため、
免疫介在性溶結性貧血の可能性もなくなり、
FIPでよかったのだろう、モルヌプラビルが効いているのだろう、
ということになりました。
そして、84日間の投薬、時々の検査通院を経て、
先日、「寛解」に至ったのです。
再発の可能性があるため、
1か月後、3か月後、半年後、と
検査・経過チェックの予定だそうです。
今まで、何頭もFIPで亡くし、
悲しい、悔しい思いをしてきましたが、
治療可能な病気になったことをしみじみと
嬉しく思っています。
ドライタイプのFIPは診断自体がとても難しいです。
世田谷のかかりつけ病院を、私はとても信頼していますが、
血液検査結果を拝見すると、本当に決め手にかけるのです。
そして、世田谷の病院にはFIPの治療薬はなく、
FIPだとしたら緩和ケアしかできない、ということは
早い時期に言われていたそうです。
ジルくんも、亡くなる直前まで、FIPと診断してもらえませんでした。
FIPと診断がついて私に相談してもらえれば、
治療の選択肢を提示できたのに、残念です。
(相談はしていただいていて、私はFIPの可能性が高いと申し上げていて
でも、先方の病院がFIPではないとおっしゃっていたのです……)
ムースくんの場合、オーナーさんの予備知識もあり、
病院と私が知り合いで、病院も「FIPなら渡部に相談しろ」的なことを
言ってくれていたようなので、すべてがスムーズに運びました。
ムースくんは本当に運がよかったです。
ヘマトクリット13%だと、数日遅れていたら命とりだったかも……。
FIPという病気やMUTIANという薬については
以前ブログに書いたこともあります。
今日、皆様にお伝えしたいのは、
●FIPは治る病気になった
●手術1回分くらいの値段で治る(再発可能性はあるが)
●診断が難しい病気だが、原因不明の発熱、貧血、黄疸があるなら、
まずFIPを疑って治療をしてみるのがよいのでは?
ということです。
FIPの診断、治療ができる病院が少ない現状はありますが、
関東地方にいくつかあります。
このブログをご覧になっている方は、
何か不安になれば、私にご連絡いただければと思います。
ムースくんの寛解、本当に嬉しいです。
通院、看病してくださったオーナーさんには
心から感謝しています。
私もずいぶん勉強させていただきました。
今後は、RIEN出身の猫がFIPで亡くなることがありませんように。
すべての猫がFIPで亡くなることがありませんように。
2022年10月26日
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