2023年01月08日

ドイツのブリーダーから訴状が届きました。

本題にはいるまえに、
年賀状をくださった皆様、有難うございました!
猫たち、人間のお子様の成長の様子など楽しく拝見致しました。
いつもお返事出さずに申し訳ありません。

さて。

昨年10月、宇都宮地方裁判所大田原支部から
「特別送達」が届きました。
これは、訴状や支払い督促など特別な手続きの時に
最初は不在票を受け取ったので、書類を受け取るまでの間は、
「近隣でトラブル起こしたかな?」
「滞納してる税金、ローン返済、カード返済はないはずだけど。
滞納したとして、いきなり特別送達はこないよね?」と
あれこれ思い悩みました。

封書を受け取って開封すると、なんと、
ドイツのカッセル簡易裁判所からの「訴状」。
カステラのブリーダーさんが、カステラの売買代金(残金)を
支払え、というのです。

カステラ来日時に、経緯を書いてますが、
私は、2度支払っているのです……。
http://rien.seesaa.net/article/479028529.html

大田原の裁判所に電話すると、
「外務省などを通じて正式に送られてきたものらしいので、
ウチの管轄なので、ウチから送りました」とのこと。
訴状自体は正式なもののようです。

日本から外国に訴訟を起こす時の方法が
書いてある記事を見つけました。
海外から日本に対しても、こんな感じでしょう。
https://www.konishilaw.jp/column/6746/

訴状、裁判手続きの案内、証拠3点、ハーグ条約に基づいた申請という書類が
日本語訳とともにはいっていました。
日本語訳は、法廷公認翻訳士のサインがあり、
翻訳が正しいという証明がされています。

訴状を受け取ってから1か月以内に、抗弁の意思を伝え、
それから1か月以内に答弁書を送れ、という記載がありました。
弁護士はつけなくてもよい。
答弁書を出したからといって、口頭審理に出なくてよいわけではない。
生活に困窮していることを証明すれば、国庫から交通費が支払われることがある。
ということは、日本語で書いてありました。

抗弁したいことと、日本語の答弁書を送りました。
(ドイツ語で書けとは書いていなかったので、
ドイツで翻訳してくれるのかな?と思った)
11月16日にカッセル裁判所が受け取ったことを
郵便局のサイトで追跡確認しています。

12月30日に、カッセル裁判所から、
「ドイツの裁判所はドイツ語の書類しか受け付けない。
ただし、あなたの答弁の意思は認める。
ドイツ語の答弁書を2022年1月20日までに送ることを認める」というような意味の
ドイツ語の書類が届きました。
(2022年1月20日は、1年前だよ、とつっこみつつ……)
書類の日付は12月12日だったので、到着までに2週間以上かかってますね。
(私からの書類送付は速達を使わなくても6日程度で届いた)

で、現在、答弁書のドイツ語訳をしています。
最初、Google翻訳を使っていましたが、
Twitterでぶつぶつつぶやいていたら、
ドイツ在住の日本人フォロワーさんから、
「Deeplの翻訳のほうがいいですよ」と教えていただきました。
その時は、Googleでの翻訳がほぼ終わっていたので、
まずは、Googleで翻訳を完成させました。

答弁書の冒頭に、10行程度で、結論を述べているのですが、
その部分だけ、今年猫を連れてきてくれるドイツのブリーダーさんに
添削していただきました。
私が、Googleで英訳した文章を、ブリーダーさんが
Deeplを使ってドイツ語訳し、それを手直ししてくれました。

和文→英語→ドイツ語→ドイツ人添削のドイツ語と、
和文→Deepl翻訳のドイツ語を、
ドイツ在住のフォロワーさんに比べていただきました。
どちらも意味がわかるが、どちらかといえば、Deepl機械翻訳のほうが
わかりやすいかも、とのことでした。

結論部分は、ドイツ人が添削してくれた文章を使うとして、
他の部分は、Deepl翻訳でもだいたい意味が通じるのだろう、と思います。

文章は、GoogleでもDeeplでも、1文ずつドイツ語に訳し、
それを、再度日本語に訳して、主語述語などがおかしければ、
もとの日本語を直して翻訳し、日本語に再翻訳する、という作業をします。

証拠は、私とブリーダーさんのメールのやりとりが中心ですが、
それは、英文です。証拠も全部ドイツ語訳しなくてはなりませんが
英語→ドイツ語→英語、で翻訳すると、ほぼ同じ文章になります。
やはり、日本語は特殊なんでしょうね。

DeeplとGoogleで、日本語→ドイツ語→日本語と訳した時の
再翻訳の日本語のマトモ率が高い気がしたので、
答弁書を全部、Deeplで翻訳しなおしました。
場合によっては、Google翻訳と比べたり、
一度英文に直してからドイツ語訳して、それを
また日本語に訳したりして、できるだけ誤訳が少なくなるよう
できる限り頑張りました。
A4で24枚あるので、全部、ブリーダーさんに目を通してもらうのは
大変すぎますし、そのためには、一度英訳しなくてはなりませんし。

Twitterではいろいろつぶやいているので、
ドイツの裁判所は言葉に厳しいので私は不利、
ドイツは敗訴者が先方の弁護士費用も負担する、
ドイツの判決をもとに日本の強制執行も可能、
強制執行をするときに、全銀行の預貯金を調べる手段がある、
ペットも動産なので、強制執行される可能性がある
など、いろいろコメントをいただいています。

いただいたコメントについて、検索をかけてきたので、
ドイツの裁判事情、強制執行の手続きなど、少しわかりました。
とても勉強になっています。コメントくださった皆様有難うございます。
おそらく、先方は弁護士保険に入っているのでしょう。
先方が負けたとしても弁護士費用を払う必要なく、
ドイツから訴状が届いて、びびって私が支払うか、
私がどうしていいかわからず放置すれば、
そのまま欠席裁判で原告勝訴になるだろうと思っているのでしょう。
私が負ければ、先方の弁護士費用も請求できてウハウハ?

外国判決を日本で執行する方法
https://www.mc-law.jp/kigyohomu/16315/

日本での手続きが始まれば、知り合いの弁護士さんに相談します。
最悪、強制執行の日に猫連れて夜逃げします。
(差し押さえの時にあったものしか差し押さえられないはず)

まあ、その前に、ドイツの裁判所で負けたくないです。
日本語がわかるドイツ人国際弁護士にメールしたら、
相談1時間350€、裁判所に行く日の日当は700€+税金だそうです。
訴額が1500€なので、たぶん、超えちゃいますね。

弁護士費用を払うより、負けたとしても自力でやって
経験したほうがおもしろそうです。
1500€分の動産を差し押さえるって、何もっていくのかな?とか……。
現時点では、どこの銀行にも預貯金なし。
公庫、地元銀行のローンと銀行のカードローンがあって、
病院代やフード代のカードの引き落とし分ギリギリしか
お金はいってないし。

1500€の債権に対して家土地差し押さえてきたら
過剰差し押さえの抗弁出せるそうです。

うちには、絵画、貴金属、100万以上の現金はない。
動産差し押さえるとして、冷蔵庫とエアコンくらいかなあ。
生活必需品と事業に必要な機械や動物は差し押さえ不可らしいので、
冷蔵庫、エアコン、猫は差し押さえられないと思うのだけれど、
金目のものは猫くらいなので、日本での手続き開始したら
猫連れて夜逃げしないと! です。
(突然、ドイツの執行官がうちにきて猫を持っていくことはまずない。
猫は差し押さえたとしても、競売にかけて現金化するのが難しいので
まず、差し押さえられることはない、と書いている記事もいくつかありました。
家屋明け渡し請求&差し押さえのケースで、差し押さえた家財に
猫2頭が含まれていて、それを愛護センターや保護団体が保護して・・・という
記事はありましたが、明け渡しを伴わない場合、
ペットが差し押さえの対象になることは
まずないだろう、ということではあります)

そんなこんなで、正月から答弁書と証拠のドイツ語訳を頑張っています。

日本語の答弁書を載せておきます。
ご興味ある方は、「続きを読む」をクリックしてください。
今回の経緯を時系列でも説明しています。
お読みになってお気づきのことがある方は
お知らせいただければ、と思います。

10日に、答弁書と書類はいったん送るつもりですけれど、
今後の手続きのためのアドバイス等ありましたら教えてください!
答弁書

訴えには理由がない。
なぜならば、原告・被告間に生じた売買契約による(ドイツ民法433条2項)被告の債務は、「第三者のためにする弁済」により消滅しているからである。(ドイツ民法362条2項、185条)。被告は、原告のメールによる指示に従って、原告の中国の会社「CEBON Limited」の銀行口座に1065ドル支払いをした(証拠B24.B26.B27)。被告は、原告からのメールによる指示に従って、ウェスタンユニオン経由でイギリス人「Akele Emmanuel」にも824.44ポンドを支払った。原告はそれを受け取った(証拠B47.B48.B49.B50)。
よって、原告の請求を棄却し、訴訟の費用は原告の負担とする、という判決を、被告は求める。

T 原告の主張への答弁
被告・原告の職業については争いがない。
被告は、東京都内でブリーダー・猫カフェを経営していたが、新型コロナウィルスの影響により、栃木県に移転した。コロナの影響と、コロナの影響による被告の精神疾患発症のため、猫カフェは、ほぼ休業中である。

原告と被告の間にニルスという雄猫の売買契約があったことについては争いがない。

しかし、添付書K1は、被告の元に送付されていない。この書類を被告へ送付することを求める。

当該猫ニルスの購入価格、7か月分の世話代、狂犬病ワクチンや抗体価検査について被告が負担することについては争いがない。しかし、狂犬病ワクチン1回分については原告が負担することとなっていた(証拠B4号証)。詳細は後述する。

2020年8月16日に空輸が失敗している事実については争いがない。しかし、これは被告の責によるものではない(証拠33〜38号証)。詳細は後述する。

また、原告がアーナタールからフランクフルトへの往復の交通費690ユーロをPETAIRに支払ったことについて、原告は、被告がPETAIRに支払うべき費用は1444ユーロであると述べ(証拠B43号証)、被告はクレジットカードでPETAIRに支払いをした。

添付書類K2は被告の元に送付されていない。この書類を被告へ送付することを求める。

また、8月16日以降に被告は当該猫ニルスの売買代金を支払うことになるが、その金額に690ユーロを加算するという、原告から被告への申し入れはなかった。以上より、売買代金に690ユーロが加算され、被告が同意したという事実そのものがなく、原告から被告への690ユーロの請求には理由がない。

狂犬病のワクチンについて、日本の検疫に必要とされるのは2回の接種である(証拠B3号証)。原告は、「狂犬病のワクチン1回分は譲渡費用に含む」としている(証拠B4号証)。そして、1回目の接種時期について被告から原告に生後91日以降の接種を依頼していたにもかかわらず(証拠B3号証)、原告は1回目の狂犬病ワクチンを生後91日未満で接種した(証拠B8号証)。そのため、被告は原告に対して何度も狂犬病ワクチンの再接種を依頼した(証拠B8〜B15号証)。原告の過失により、当該猫ニルスに3回の狂犬病ワクチンの接種を受けさせる必要が生じたため、被告が負担すべき狂犬病のワクチンの費用は1回分のみである。そして、被告は狂犬病ワクチンの費用について、領収書等を受け取ったことはない。

日本国の検疫には、狂犬病ワクチンの抗体価の試験結果が必要なのは確かである。その費用を被告が負担すること自体は承知しているが、その領収書が原告から被告に送られたことはない。また、添付書類K3によれば、「ワクチン3回分と血液検査の費用」の領収書とあるため、K4の費用を新たに追加する必要はないと思われる。

フライトの前に公認獣医師による検査が必要であり(ACフォーム)、その費用を被告が負担することは問題ない。原告から被告に、その領収書が送られたことはなかった。

被告は原告に、予約金として800ユーロを支払った(証拠B7号証)。

原告は、「被告は支払いをしなかった」と述べているが、被告は、原告の指示する残金900ユーロを(証拠B19号証)を、原告のドイツの銀行口座に送金した(証拠B23号証)。しかし原告からそれを取り消して、原告の中国の会社の銀行口座に送金するよう指示があった(証拠B24号証)。これは送金完了し、取り消し不可能な状態である(証拠B27、B28号証)。この時点で、被告の売買代金債務は、「第三者のためにする弁済(ドイツ民法362条2項、185条)」により消滅した。その後、原告は中国の銀行口座への送金も取り消すよう指示をし、中国人「ZHANG TIANYE」あてに、ウェスタンユニオンから送金するように求めた(証拠B31号証)。被告は中国人「ZHANG TIANYE」宛にウェスタンユニオンから送金したが失敗した。原告は、イギリス人の男性「Akele Emmanuel」あてにウェスタンユニオンから送金するように指示した(証拠B47号証)。この時点では、中国の銀行口座への送金取り消しの可否が不明であったため、被告は返金がなされるものと期待していた。そして被告はイギリス人男性「Akele Emmanuel」へウェスタンユニオン経由で送金し、これは成功した(証拠B49、B50、B52号証)。この支払いは、原告の不当利得となり、被告は返還請求をする権利があると考えている。仮に、中国の銀行への送金が有効な弁済と認められなかったとしても、イギリス人男性への支払いが「第三者のためにする弁済(ドイツ民法362条2項、185条)」となり、いずれにせよ、被告の売買代金債務は消滅している。なお、このイギリス人男性は、原告のアフリエイトの仕事仲間だと説明している(B47号証)。この点、時系列で詳しく後述する。

上記やりとりにつき、メールによるコミュニケーションが添付書K6として添付されていると記載があるが、被告のもとにはK6は送付されていない。K6の送付を求める。

なお、原告は、被告がハッキングがあったと主張しているとするが、ハッキングがあったことを主張しているのは原告である(証拠B55号証)。詳細は後述する。

U 被告の主張

1.まず、原告と被告の売買代金の発生、消滅の経緯を時系列で説明する。

2019年
9月2日 原告はフランクフルトまたは原告宅で被告へ猫を引き渡すことが譲渡条件だとメールで述べた(証拠B1号証)

9月2日 被告は、被告または被告の友人がフランクフルト空港に行くだろうとメールで述べた(証拠B2号証)

9月6日 被告は、日本の検疫についてメールで説明した(証拠B3号証)。その際、1回目の狂犬病ワクチンは生後91日以降に接種しなければならない旨も記載している。

9月27日 原告は、繁殖用の雄猫は1200ユーロであり、その費用には、狂犬病ワクチン1回分が含まれていると述べている(証拠B4号証)。また、予約金は400ユーロである旨も述べている。

原告と被告の間に契約書が交わされる(証拠B5号証)。

9月28日 被告は原告に対し、予約金を倍額払いたい旨申し入れる(証拠B6号証)。理由は、日本の検疫のため、約10か月原告が猫を預からなくてはならず、餌代、世話代がかかるため、予約金を多めに払うことで原告の負担を軽くしたいと考えたからであった。

9月30日 被告より原告のドイツの銀行口座に予約金800ユーロが送金された(証拠B7号証)。

12月29日 原告より、当該猫の1回目の狂犬病ワクチンの接種が12月20日に行われたというメールが被告に届いた(証拠B8号証)。しかし、12月20日だと、当該猫が生後91日を超えていないため、狂犬病ワクチンが日本の検疫との関係では無効になってしまう。被告は原告に対し、1回目の狂犬病ワクチンは12月27日以降でなくてはならない旨のメールを送った(証拠B9号証)。しかし、原告はこのことを理解しなかった。被告は、何度も狂犬病のワクチンの再接種を依頼した(証拠 B9〜15号証)

2020年
1月6日 原告は日本大使館に確認して問題がないと言ったため、被告は日本の検疫所に相談した(証拠B15号証)。結果として原告は当該猫に再度狂犬病のワクチンを接種し、検疫の手続きは進行した。

4月19日 新型コロナウィルス感染拡大により、日本からドイツへの往復が難しくなったため、当該猫を貨物便で輸送することを、被告は原告に依頼した(証拠B16号証)

7月14日 原告がペット輸送代理店PETAIRに、8月8日のフライトを予約した(証拠B17号証)。8月8日のフライトだと、検疫期間が終了していないため、当該猫のフライトを8月14日以降に変更するよう、被告は原告に依頼した(証拠B18号証)

8月7日 売買代金の残金等は900ユーロだと、原告が被告に連絡し(証拠B19号証)、被告はこれを了承した。被告は原告に、明細を送ることを依頼した(証拠B20号証)。

8月9日 原告から被告へ、原告のメールサーバー(?)のトラブルがあった旨メールがあった(証拠B21号証)。

また、残金についての説明があったが、請求書や領収書の添付はなかった(証拠B22号証)しかし、売買代金の残金、7か月分の餌代、狂犬病ワクチンや抗体価検査代等としては妥当な金額だと被告は考えたこと、ビットコインやペイパルによる送金方法が被告にはわからなかったこと、銀行送金には2週間程度の時間がかかるが当該猫のフライトが迫っていることから、予約金を振り込んだのと同じドイツの銀行の原告の口座に被告は900ユーロを送金した(証拠B23号証)。

原告は被告に対し、ドイツの銀行への900ユーロの送金を取り消し、中国の原告の会社の口座に送金するよう依頼した(証拠B24号証)。なお、このメールには当該猫の写真が添付されていた。

8月10日 被告は、原告のドイツの銀行への900ユーロの送金を取り消し、原告の中国の銀行の送金額について質問をした(中国の銀行への送金はドル建てであった)。(証拠B25号証)。この原告のドイツの銀行口座への送金取り消しは問題なく、被告の口座に返金された(しかし、送金手数料と取り消し手数料それぞれ3000円必要であった)。

原告は、1065ドルを、原告の中国の口座に送金するよう被告に依頼した(証拠B26号証)。

被告は、ただちに原告の口座に1065ドルを送金した。それは、8月12日に受取人の口座に入金済である(証拠B27、B28号証)。ただし、入金済の確認ができるようになったのは9月19日である。

8月11日 原告は、中国の銀行への送金も取り消すよう被告に依頼した(証拠B29号証)。

8月12日 原告は、2〜3日で中国の銀行から被告の口座に返金されるだろう等のメールとともに、日本の検疫のACフォームを送った(証拠B30号証)。ACフォームとは日本の検疫に必要な、公認獣医師による検査証明書である。

8月14日 原告から被告へ、「ZHANG TIANYE」という中国人宛に1000ドルを
送金するよう依頼があった(B31号証)。このメールには、当該猫の写真2点と当該猫の狂犬病ワクチン抗体価検査結果が添付されていた。

8月16日 原告は、パンデミックによりドイツの銀行は送金を受け取れないと説明した(証拠B32号証)

この日、当該猫の日本へのフライトが予定されていたが、被告のクレジットカード会社のセキュリティ機能が働き、「第三者による不正利用の可能性がある」と被告に通知した(証拠B33号証)。被告は、クレジットカード会社や日本の検疫所のアドバイスに従い、ペット輸送代理店PETAIRに対し、当該猫の写真や書類を被告に送るよう、何度も依頼した(証拠B34〜38号証)。PETAIRは被告の依頼に応じなかったため、クレジットカードでの支払いが承認されず、当該猫の日本へのフライトはキャンセルされた。

8月17日 原告は被告に対し、ペイパルで1205ドルを送金するよう依頼した(証拠B39号証)。金額についての説明、請求書や領収書の添付はなかった。

被告は、1200ドルも払えないので、契約を解除したい旨を原告に述べた(証拠B40号証)。

原告は、1065ドルで当該猫を被告に譲渡したいと述べた(証拠B41号証)

被告は、PETAIRへの支払いが1440ユーロを超えるならば、被告は支払うことができないと述べた(証拠B42号証)

原告は、被告に対し、1065ドルをペイパルで支払うよう要求し、被告がPETAIRに支払う金額は1440ユーロを超えないと述べた(証拠B43号証)

被告は、ペイパルで原告に1065ドルを支払おうと試みたが失敗した(証拠B44号証)。

原告が被告に対し、「ZHANG TIANYE」という中国人宛の支払いを求めた件につき、被告は必要な情報を原告に質問した(証拠B45号証)。しかし、この支払いはウェスタンユニオンから拒絶された。

8月18日 原告は被告に対し、ドイツ政府がブリーダーに多額の税金を課しているため、ドイツの銀行経由ではなく、他の支払い方法を希望する旨説明した(証拠B46号証)。

原告は、原告の仕事仲間であるイギリス人男性(Akele Emmanuel)宛に、ウェスタンユニオン経由で送金するよう被告に指示をした(証拠B47号証)。

原告は、イギリス人男性(Akele Emmanuel)への送金理由をコロナの影響に対する寄付と答えるよう、被告に指示をした(証拠B48号証)。

被告は、原告の指示に従って1100ドル(824.44ポンド)送金した(証拠B49号証)。原告が要求した1065ドルより多いのは、ACフォームの再取得の必要性を考慮したからである(結果的には、ACフォームの再取得は不要であった)。なお、ACフォームとは日本の検疫に必要な書類のひとつであり、現地出発10日以内に出発国政府の裏書を必要とするものである。

原告は、支払いの控えのコピーを送るよう、被告に指示をした(証拠B50号証)。
原告は、PETAIRにフライトの予約をしたいと申し出(証拠B51号証)、被告がPETAIRに支払うのは1444ユーロのみであると述べている。

原告は、被告の送金を受け取ったと述べた(証拠B52号証)。

その後、当該猫は来日し、被告の元で暮らしている。

9月19日 原告は、原告のドイツの銀行宛に1760ユーロを支払うよう、被告に要求した(証拠B53号証)。

原告は、690ユーロを支払うよう被告に要求した(証拠B54号証)。

9月20日 原告は、1580ユーロを支払うよう、被告に要求した(証拠B55号証)。また、被告のこれまでの支払いはハッキングによるものだ、と原告は主張した(証拠B55号証)。

9月22日 被告は、もしもハッキングがあったのであれば被告は被害者なので、ドイツの警察に届け出ることを原告に依頼した(証拠B56号証)。

9月24日 原告は、900ユーロを受け取っていないので、法的措置をとるだろうと被告にメールした(証拠B57号証)。

10月4日 原告は、8月9日のメールは原告のアカウントから送信されていない、被告が送ったメールにはメールアドレスのスペルミスがあったと被告に述べた(証拠B58号証)。


2.原告と被告の契約内容について

(1)譲渡費用は1200ユーロ、(証拠B4、B5号証)、譲渡費用には1回目の狂犬病ワクチン費用が含まれ(証拠B4号証)、当該猫の引渡し予定地はフランクフルト空港(証拠B1、B2号証)であった。予約金は400ユーロであった(証拠B4号証)が、被告は倍額を支払いたい旨申し入れ(証拠B6号証)、実際に被告は原告のドイツの銀行口座に800ユーロを送金した(証拠B7号証)。予約金を倍額支払った理由は、日本の検疫が180日間の待期期間を要求するため、原告は約10か月間も当該猫を預からなければならないことへの配慮からである。

(2)この時点で、被告が負うべき債務は、残金400ユーロと2回目の狂犬病ワクチン費用、狂犬病ワクチン抗体価検査費用、ACフォーム作成に必要な費用であった。フランクフルトまでの交通費は原告負担、フランクフルトから日本への輸送費用は被告負担と、被告は推測していた(証拠B1,B2号証)。なお、この時点では、被告または被告の友人がフランクフルトまで猫を迎えに行くことになっていた。

(3)2020年新型コロナウィルスにより、日本から外国に行くことが困難になった(ドイツは観光客の受け入れを停止していたし、日本は外国からの入国時に14日間の隔離を要求していた)。そのため、被告は、当該猫を貨物便で輸送するよう原告に依頼した(証拠B16号証)。原告は、被告の申し入れを承諾し、原告はペット輸送代理店に当該猫の輸送を依頼することに契約が変更された。原告は、8月8日のフライトを予約したが(証拠B17号証)、その時点では当該猫の検疫が終了していないため、フライトを延期するよう被告は原告に依頼した(証拠B18号証)。検疫の終了日について、被告は原告に2月28日のメールでも伝えている。

(4)原告は、被告に残金が900ユーロであると通知した(証拠B19号証)が、そこには狂犬病ワクチン、狂犬病ワクチン抗体価検査、ACフォーム作成に必要な費用の請求書や領収書の添付はなかった。被告が日本の検疫について説明していたにもかかわらず(証拠B3号証)、1回目の狂犬病ワクチンの接種日は日本の検疫に適合しないものであったので(証拠B8〜B15号証)、その分の狂犬病ワクチン接種費用は原告が負担すべきであると考えるが、その旨についても原告の説明はなかった。請求書や領収書の添付がないことは原告の契約違反であるが(証拠B5号証)、残金と諸費用の合計としてはおよそ妥当な金額だと被告は考えた。証拠B8〜15号証、B17、18号証のやりとりからわかるように、原告は聞く耳を持たないので、細かく指摘しても無意味であろうと被告は考えたのであった。

3.被告の弁済について

(1)被告は、原告のドイツの銀行口座(予約金を支払った口座)に900ユーロを送金した(証拠B23号証)。しかし、原告はこれを取り消すよう依頼し(証拠B24号証)、被告はこれを取り消した(証拠B25号証)。

(2)原告は、原告の中国の会社の銀行口座に、残金を振り込むよう依頼した(証拠B26号証)。被告は、2020年8月10日14時44分に原告の中国の口座に1065ドルを送金した。それは8月12日に送金完了となった(証拠B27、B28号証)。原告の依頼に応じて、原告の中国の銀行の口座に送金をしたことで、被告の債務は消滅した(ドイツ民法362条2項、185条)。

4.原告の当該猫の引渡しについて

(1)原告は、当該猫をペット輸送代理店PETAIRに引渡したとし、PETAIRから被告に猫輸送料金の請求があった。被告はクレジットカード番号をPETAIRに知らせたが、クレジットカード会社は「カードの不正利用の可能性があるため」支払いを承認しなかった(証拠B33号証)。クレジットカード会社と日本の動物検疫所は、被告に対し、当該猫の写真や検疫に必要な書類のコピーをPETAIRに要求し、カードが不正利用ではないことを証明してもらうようアドバイスをした。そして、被告はPETAIRに当該猫の写真や書類の写真を送るよう何度も依頼した(証拠B34〜38号証)。しかし、PETAIRは被告の依頼に応じることはなく、当該猫の輸送はキャンセルされた。

(2)原告は、被告に1205ドルを送金するよう依頼したが(証拠B39号証)、被告はこれを拒否し、当該猫の引渡しを諦める、すなわち売買契約を解除した旨を申し入れた(証拠B40号証)。ここで、原告と被告の間の売買契約はなかったことになる。

(3)原告から、1065ドルで当該猫を売りたいと被告に申し出があった(証拠B41号証)。また、被告は1440ユーロのみをPETAIRに支払えばよいと、原告は被告に申し出た(証拠B43号証)。この時点では、被告が中国の銀行に送金した1065ドルの取り消しの可否は不明であり、被告へ返金されていなかったが、返金されるだろうと被告は期待して、被告は新たな契約を結ぼうと決意した。ここで、新たな契約として、当該猫ニルスの売買契約が、売買金額1065ドル、日本への猫の輸送費用1440ユーロで成立した。被告はPETAIRに猫の輸送費用1440ユーロをクレジットカードで支払い、原告はPETAIRに当該猫を引渡し、被告が当該猫を受け取ることにより、原告の当該猫引渡し債務は消滅した。

5.被告の新たな売買代金債務1065ドルについて

(1)原告は、1065ドルをペイパルで支払うよう被告に要求し(証拠B43号証)、被告はこれに応じようとしたが失敗した(証拠B44号証)。原告は、中国人「ZHANG TIANYE」宛にウェスタンユニオン経由で送金するようにも指示したが(証拠B31、45号証)、これはウェスタンユニオンから拒絶された。

(2)原告は、原告のアフリエイトの仕事仲間であるイギリス人男性「Akele Emmanuel」あてに、ウェスタンユニオン経由で送金するよう被告に依頼した(証拠B47号証)。また、その送金理由は、コロナのための寄付であるとするよう指示している(証拠B48号証)。

(3)被告は、ウェスタンユニオン渋谷店から、イギリス人男性「Akele Emmanuel」宛に、1100ドル(824.44ポンド)を送金した(証拠B49号証)。原告は、支払い控えのコピーを送るよう指示し(証拠B50号証)、イギリス人男性「Akele Emmanuel」が送金を受け取った(証拠B52号証)。被告は、原告の要求1065ドルより多い1100ドルを送金したが、これは、ACフォームの有効期限が10日間であり、被告の支払いの時点では当該猫のフライトの日時が未定であり、その日程によってはACフォームを再取得しなければならないかもしれないことへの配慮である。銀行への送金手数料は3000円、ウェスタンユニオンからの送金手数料は5000円であり、ACフォーム再取得費用を後日請求された場合、送金手数料とあわせると高額になる可能性があり、35ドルをあらかじめ支払ったほうが安いと被告は考えたのである。ただし、ACフォームの再取得の必要はなかった。被告が、原告の指示により1100ドルをイギリス人男性「Akele Emmanuel」に支払ったことで、被告の新たな売買代金債務も消滅した(ドイツ民法362条2項、185条)。

6.原告は、ハッキングまたはメールアドレスのスペルミスを理由に、被告の売買代金債務等は消滅していないとして、被告に再度売買代金等を請求した。

(1)原告は、原告のドイツの銀行口座宛に、800ユーロ+960ユーロ合計1760ユーロを送金するよう、被告に要求した(証拠B53号証)。

(2)原告は690ユーロを支払うよう、被告に要求した(証拠B54号証)。

(3)原告は、被告に900ユーロ+680ユーロ合計1580ユーロを支払うよう要求した(証拠B55号証)。また、被告がハッキングにあったのだろう、と原告は主張した。被告は、仮にハッキングがあったならば、ドイツの警察に連絡してほしいと申し出た(証拠B56号証)。

(4)原告は、900ユーロを支払うよう被告に要求した(証拠B57号証)。そして、8月9日のメールは、原告のアカウントから送信していないと述べた(証拠B58号証)。そのメールにはスペルミスがあった、そしてそれは被告の詐欺であると原告は主張している。

(5)被告の代金債務は消滅しているので(証拠B27、B28、B49、B52号証)、原告の請求には理由がない。原告の請求は、すべて金額が異なり、それらには明細、請求書、領収書などの添付がないことも、原告の請求が根拠のないいいかげんなものであることがわかる。なお、690ユーロまたは680ユーロについて、原告はPETAIRに支払った輸送費だと主張しているが、被告がPETAIRに支払うべきは1440ユーロであると原告が断言しており(証拠B43号証)、被告はPETAIRにクレジットカードで1440ユーロを支払った以上、被告には680ユーロまたは690ユーロを原告に支払う債務は発生していない。

7.ハッキングまたはメールアドレスのスペルミスについて
(1)原告は、ハッキングまたはスペルミスがあったと主張している(証拠B55,B58号証)。たしかに、8月7日より以前のメールと9月以降のメールのアドレスは、「norw”e″gische.waldkatzen@t-online.de」であり、8月9日〜18日のメールアドレスは「norw”a”gische.waldkatzen@t-online.de」である。

(2)仮に、被告がメールアドレスのスペルミスをしていたとするなら、メールはエラーとなり、原告の元へは届かなかっただろう。2020年7月14日から8月14日までに原告が被告に送信したメールの一覧を見ると、通信相手はすべて原告の氏名になっており、メールのタイトルから、双方が相手方への返信機能を使ってメールを送信していたことがわかる(証拠B59号証)。メールソフトの「返信機能」を使ってメールの送受信を行った場合、メールアドレスのスペルミスは発生しない。仮に、メールアドレスが無効なものとなれば、そのメールはエラーとなる。8月9日に原告のメールサーバーにトラブルがあった旨のメールがあるが、(証拠B21号証)、“e”と”a”の差は、この時に発生したのかもしれない、と被告は推測している。

(3)原告と被告のやりとりが不可能ならば、被告はACフォームを入手できず、それを日本の検疫所に確認することもできず、当該猫は日本に来ることもなかったはずである。しかし、原告は被告へ返信をしているのみならず、猫の写真、ACフォーム、狂犬病ワクチン抗体価検査結果を添付した(証拠B24、B30、B31、B60、B61号証)。また、ペット輸送代理店PETAIRに当該猫のフライト予約をして、その旨を被告に伝えたのもこのメールアドレス「norw”a”gische.waldkatzen@t-online.de」である(証拠B51号証)。

(4)また、「norw”a”gische.waldkatzen@t-online.de」がハッカーのメールアドレスとするならば、ハッカーは当該猫の写真、ACフォーム、狂犬病ワクチン抗体価検査結果を被告に送ることはできなかったはずである(証拠B24、B30、B31、B60、B61号証)。

(5)以上より、「norw”a”gische.waldkatzen@t-online.de」というメールアドレスは、原告自身のものであり、原告はこのアドレスでPETAIRに予約を入れ、当該猫の写真、ACフォーム、狂犬病ワクチン抗体価検査結果を被告に送ったのである。ハッキングやスペルミスは存在しなかったと被告は考える。よって、このアドレスから指示された中国の銀行口座やイギリス人男性への送金も「第三者のためにする弁済」として有効なものである(証拠B27、B28、B49、B52号証)。したがって、被告の債務は消滅し(ドイツ民法362条2項、185条)たばかりか、2度の弁済で多く払った部分につき、被告は原告に対して不当利得返還請求権を持つものである。
 原告は、重い税金を免れるためという理由で(証拠B46号証)、被告に何度も送金依頼、その取り消し依頼をしたうえ、被告から二度にわたる弁済を受領している(証拠B27、B28、B49、B52号証)。それにも関わらず、さらに被告に対して支払いを要求する原告の行為こそ、詐欺であると被告は考える。


posted by RIEN at 09:17| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 女中(RIEN店長) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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